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2005年1月放送 [2005年 ON AIR]

おはようございます。三浦郁子です。土曜日の朝、いかがお過ごしですか? 今年からこの「湘南クラシックサロン」では「室内楽」の名曲をご紹介していく時間が 仲間入りすることになりました。 この時間は より音楽を身近に感じていただこうと、私が世界中の街をご案内します。ごいっしょに旅をしながら 景色を思い浮かべ その街にゆかりのある音楽をお楽しみください。  私自身はピアニストですが、ピアノを含む、含まないにかかわらず、次々と国境を越えて 古典から現代まで幅広く 楽しんでいただきたいと思っています。
 よく、室内楽というのは何人くらいまでの編成をいうのですか?という質問を受けます。
きちんとした決まりはないのですが、指揮者を配さない数名の演奏者たちによる、もともとサロンのような室内で演奏することを目的とした音楽とでもお答えしましょうか。
ここでは楽器の組み合わせはいろいろですが、6重奏くらいまでをご紹介していきたいと思っています。また作曲家の生まれた国や暮らした街の様子、作品誕生の背景や交友関係、 作曲家たちがどんな風景の中で曲を生み出していったかも 興味深いところです。旅好きの私が、作曲家ゆかりの土地で感じた、空気の匂いや色を、曲の合間に少しお話することで、よりイメージを膨らませていただけたら、と思います。 第一回目の今日は ドイツの作曲家ヨハネス・ブラームスを中心に、交友の深かったロベルト・シューマンの作品とあわせて4曲をご紹介します。ブラームスのホルン三重奏曲、同じくブラームスのヴィオラソナタ、後半はシューマンの3つのロマンス、そしてブラームスの弦楽五重奏曲をお届けします。 今朝はコーヒーを多めに用意して 最後までごゆっくりとお楽しみください。
 では 早速・・・・・。まず最初にブラームスが10年間暮らしたバーデン・バーデンからご案内しましょう。 
 スイスの国境に近い南ドイツのフライブルクから列車で1時間、昔から温泉療養の地として多くの人々を迎えてきたバーデン・バーデンがあります。駅から街の中心を通り抜けて 少し郊外へ行ったところに リヒテンタールという 緑の多い、小さな村があります。ブラームスは1865年から10年間 ここに家を構え、多くの名曲を書き残しました。その中の一曲、ホルン3重奏曲をご紹介しましょう。この曲は 正式には「ピアノ、ヴァイオリンとヴァルトホルンのための三重奏曲」となっています。このヴァルトホルンとは 現在のような形のホルンではなく、ヴァルブのない、古いホルンのこと、音程を変えるのがとても難しいと言われています。現在では 普通のホルンを用いての演奏が多いのですが、ブラームスの心の中にはアルプスのふもとからこだましてくる、素朴な「森のホルン」の音色があったにちがいありません。

 「深い霧が木々の間をぬい、地を這って しだいに白い世界が広がってゆくと、凛とした空気の向こうから あなたが好んで使ったホルンの響きが聞こえるようです。山の間から太陽が顔を出すと、ふもとにひっそりたたずむ小さな村は、たちまちまぶしい光に包まれてゆきます。」
   この上なく幸福な一日
   雄大な自然と それに抱かれて暮らす人々
   優しく淡々と流れる時間の中でみる夢の数々
   楽しいことも
   悲しいことも
   いつか その全てを失う時まで

それでは ヨハネス・ブラームス作曲、「ホルン三重奏曲」変ホ長調 作品40 全4楽章から構成されています。 ギュンター・ヘーグナーのホルン、エーリッヒ・ビンダーのヴァイオリン、アンドラーシュ・シフのピアノでどうぞ。           

ブラームス ホルン三重奏曲                            

ギュンター・ヘーグナーのホルン、エーリッヒ・ビンダーのヴァイオリン、アンドラーシュ・シフのピアノで ヨハネス・ブラームス作曲「ホルン三重奏曲」変ホ長調 作品40でした。 バーデン・バーデンには ブラームスが心を寄せていた ロベルト・シューマンの妻 クララが小さな家を持っており、彼女を訪ねてこの地に来たブラームスは うっそうとした森と曲がりくねった道に囲まれたこの場所が気に入って 彼自身も家を借り、作曲に没頭したのです。現在、バス停のあたりを「ブラームスプラッツ」、そこから続くブラームス通りを歩いていくと見えるこの家は「ブラームスハウス」と名づけられ、博物館となっています。 では ブラームスの曲をもう一曲、晩年の作品から ヴィオラソナタをご紹介しましょう。もともとこの曲は クラリネットソナタとして書かれたものですが、 ブラームス自身によってヴィオラソナタに編曲されました。今日は2曲あるヴィオラソナタから 第1番をお届けします。
録音は1958年と古いですが、往年の名手による名盤、ウイリアム・プリムローズのヴィオラ、ルドルフ・フィルクスニーのピアノで ヨハネス・ブラームス作曲 全4楽章から成る 「ヴィオラソナタ」ヘ短調 作品120-1をどうぞ。                        

ブラームス ヴィオラソナタ op.120-1                 

ヨハネス・ブラームス作曲 「ヴィオラソナタ」ヘ短調 作品120-1、ウイリアム・プリムローズのヴィオラ、ルドルフ・フィルクスニーのピアノでした。 ブラームスに関する書物では、よく小道を散歩するブラームスの絵を目にしますが、うっそうとした木々に囲まれた道を 腕を後ろに組み、少しうつむき加減で ゆったりと歩く彼の姿が今にも目の前に出てきそうな村の景色、曲から感じていただけたでしょうか?
お知らせをはさんで 後半はブラームスとシューマンゆかりの地、ハイデルベルクをご案内いたしましょう。今 バックにかかっているのは シューマンのピアノ三重奏曲 第1番の第4楽章です。 どうぞ 時間までお楽しみください。                                    

CM                                   

今日はヨハネス・ブラームスとロベルト・シューマンの室内楽をご紹介しています。バーデン・バーデンから少し北へ、ネッカー川のほとりに古い大学町、ハイデルベルクがあります。丘の上のハイデルベルク城を見下ろす川の対岸には 哲学の道、と呼ばれる散歩道があり、木立の間から見え隠れする城と旧市街、ゆったりと流れるネッカー川の様子はそれは美しいものです。ロベルト・シューマンはここに住んでいたことがあり、中心街にあるアパートの2階には 今も彼が住んでいたことをしるすプレートが貼ってあります。若きブラームスが シューマン夫妻の家の門をたたいて以来、シューマンはブラームスの才能を高く評価し、彼を世に送り出す努力をおしみませんでした。 一方、とかく堅物で あまり親交のある友人がいなかったブラームスも シューマンの偉大さと 夫妻の温かさに深く 敬愛の情を抱き、それから ほどなく精神の病に倒れたシューマンとその妻クララを支え、いつしか 才能にあふれた 美しいクララに魅せられていくのです。 バスでネッカー川を渡り、しばらく行くと ツィーゲルハウゼンという小さな村に着きます。シューマンが精神に異常をきたし、療養をしていた頃、彼の妻クララにブラームスが沢山の手紙をしたためた所、多分 その頃と何も変わらない姿のままの のどかな村です。ブラームスが公私ともに 生涯に渡り、深く、深く関わった奇才 ロベルト・シューマンの作品から「3つのロマンス」を、カール・ライスターのクラリネット、フェレンツ・ボーグナーのピアノでお届けします。この曲の原曲は オーボエとピアノのために書かれましたが、この曲はしばしばフルートなどでも演奏されます。3つの短い楽曲で構成され、一曲目と三曲目は「速くなく」、それらに はさまれた2曲目は「素朴に、親密に」と 書かれています。では ロベルト・シューマン作曲「3つのロマンス」 作品94をどうぞ。
                                    

シューマン 3つのロマンス                      

カール・ライスターのクラリネット、フェレンツ・ボーグナーのピアノで ロベルト・シューマン作曲「3つのロマンス」作品94でした。
さて、最後は 私にとって どうしても手の届かない、永遠の宝石のような一曲で締めくくりたいと思います。生まれ変わったら 弦楽器奏者になって、ぜひ演奏したい、と願っている作品、ヨハネス・ブラームスが晩年、好んで夏を過ごしたスイスのトゥーン湖畔の情景に重ね合わせてお送りします。

 南東にベルナーオーバーラント三山、アイガー、メンヒ、ユングフラウを抱き、冬の厳しい寒さにも耐えながら 静かに、やわらかいエメラルドグリーンの水をたたえる湖。ほとりに点在する小さな村の家に飾られた色とりどりの花々。時間というものの存在すら 忘れてしまったような ゆっくりとした自然の営みと 溶け込むように暮らす生き物たちの息づかいが聞こえるほどの静寂が そこにはあった。 時折、流れていた霧が がまんしきなくなったように、小雨となって 湖面におりてくると、吸い込む空気が少し重たくなる。 かつて そこに住み、同じような風にふかれていたであろうその人の面影と その人が奏でた音色をアルプスの山並みに探してみる。 雪に埋もれてしまう前のアルプスから駆け下りてくる 凛とした空気が好きだったブラームス、すぐそこまで近づいてくる冬の気配に耳をすませながら、わずかな陽だまりにたたずむ その姿が 木立の影に見え隠れしているような気がした。

それでは ヨハネス・ブラームス作曲「弦楽五重奏曲 第2番」ト長調 作品111 全4楽章 アマデウス弦楽四重奏団と第2ヴィオラをセシル・アロノヴィッツの演奏でどうぞ。                                  

ブラームス 弦楽五重奏 第2番                    

アマデウス弦楽四重奏団と第2ヴィオラをセシル・アロノヴィッツの演奏で、ヨハネス・ブラームス作曲「弦楽五重奏曲 第2番」ト長調 作品111でした。 今日はドイツの作曲家 ヨハネス・ブラームスとロベルト・シューマンの室内楽をお届けしました。 いかがでしたでしょうか? この二人の作曲家については 本当に沢山の素晴らしい曲があるので、今後も しばしば取り上げていきたいと思っています。 曲をご紹介する時間はありませんでしたが、シューマンの妻、クララ・シューマンも ピアニストであり、自身で作曲もした才能あふれる女性でした。 ブラームスの多くの作品を初演しており、作曲家、あるいは ピアニストの立場から ブラームスに助言をし、その作品に影響を与えたと言われています。 生涯 独身で過ごしたブラームス最愛の女性が 彼の作品の中で生きている、とてもステキなことだと思います。 来週のこの時間は 蓮村 直さんの「映画に表れたクラシック曲」、そして 来月2月26日の「室内楽」は音楽の都ウイーンから シューベルトとモーツァルトの作品をおおくりする予定です。 どうぞお楽しみに。 それでは 次回の予告編、シューベルトのピアノ三重奏曲第1番を聞きながら 今朝はお別れです。 ご案内は三浦郁子でした。
みなさま どうぞよい週末をお過ごしください。                              
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